最期まで
自分らしく生きる、
に寄り添う

前橋城南病院の
エンド・オブ・ライフケア

「死の過程」のイメージ

突然死
突然死

普通に過ごしていた方が、突然亡くなる場合。

がん
がん

がんなどの方。ある程度まで普段どおりに過ごせますが、最期の数カ月で急激に悪くなる経過をたどります。

臓器不全
臓器不全

がん以外の臓器疾患(心不全や肺炎、腎不全等)の方。急に悪くなったときは死に至る可能性がありますが、治療に反応すれば2/3程度の体力で持ち直します。これを繰り返しながら徐々に悪くなっていきます。

認知症等
認知症等

フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)や認知症、神経疾患(脳・脊髄・神経系の疾患)の方。低空飛行で十数年かけて徐々に悪くなっていきます。

J Am Geriatr Soc. 2002[PMID:12110073]

人によって
「死の過程は」
こんなにもちがう

人によって「死の過程」はこんなにもちがいますが、ご本人・ご家族が闘病中に「最期について考え、準備する」のはむずかしいことです。そのため、想像以上に大変な思いをしたり、望みどおりの治療を進められなかったりすることもあります。特に臓器不全のグループは良くなったり悪くなったりするたびに入退院を繰り返すため、闘病生活の中でご本人・ご家族ともに疲弊してしまうことが少なくありません。
当院では「エンド・オブ・ライフケア」と称して、ご本人の望む治療・ケアをするために、またご本人・ご家族が治療以外の部分で大変な思いをしないための取り組みをおこなっています。

緩和ケアは
「診断時」
からはじめる

従来の医療では、回復の見込みがなければ積極的治療から緩和ケアへという「切り替え型モデル」でしたが、昨今ではまったくイメージの異なる「シフト型モデル」にチェンジしてきました。がんのように治る可能性のある疾患は積極的治療/緩和ケアの比率が徐々にシフトしていくモデルとなっています。心不全のように完全に治る可能性がない疾患は病態改善治療/緩和的治療の比率がシフト&最後まで病態改善治療が残るモデルとなっています。(原疾患の治療そのものが苦痛を和らげるため、終末期までカテコラミン・強心薬・利尿剤・抗生剤などの治療が残ります)。 当院ではこの新しい緩和ケアの考え方に沿って、診断時~最期の治療・ケアまで適切に対応してまいります。

人生会議ってなに?

Advanced Care Planning

「人生会議」とは、アドバンス・ケア・ プランニング(Advanced Care Planning=ACP)の通称です。アドバンス・ケア・プランニングとは、あなたが「大切にしている考え方」「望んでいる医療やケア」について考え、また、信頼する人たちと話し合うことをいいます。
命に係わる大きな怪我や病気をしたとき、約70%の人は「今後の医療やケアなどについて自分で決め、人に伝えること」ができなくなるといわれています。もしもあなたがそのような状況になったとき、家族などが「あなたなら、たぶん、こう考えるだろう」と想像しながら医療・ケアチームと話し合いをすることになります。ですから、あなたの価値観・望みを事前に伝えることが、あなたの望む生活や医療・ケアを受けるために、とても重要な役割を果たします。
全ての人が人生会議をしなくてはならないというわけではありません。一方で、人生会議を重ねることで、あなたが自分の気持ちを話せなくなった「もしものとき」には、あなたの心の声を伝えることができるかけがえのないものになり、また、あなたの大切な人の心の負担を軽くするものにもなるはずです。

実際に
どんなことをするの?

本人・家族・医療チームで話し合いを重ね、本人の望む医療・ケアを組み立てていきます。ここで大事なのは「話し合いのプロセスそのものを重視し、何かを決めたり結論を出したりするためにおこなわない」ということです。「今、あなたがどう思っているか」を全員で共有するためのものですから、家族と考えが異なるとき・不安が強くなったときなど、必要なときには何度でも話し合いをおこないます。
当院では、入院時、全ての患者さんに「もしもシート」というアンケートをとらせていただきます。「もしも、自分で食事ができなくなったら」など、もしものときに備えて人生観や死生観を伺っていきます。本人の抱える「全人的苦痛(身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルペインの総称)※」を整理したうえで、本人・家族・医療チームが一緒に考えていきます。

病院のスタッフは
どんな役割なの?

当院では、医師・看護師・薬剤師・相談員・リハビリスタッフ(作業療法士・理学療法士・言語聴覚士)などの多職種が「緩和ケアチーム」を組み、アドバンス・ケア・プランニングにあたっています。では、この緩和ケアチームの役割はどのようなものなのでしょうか?
緩和ケアチームは、たとえばソムリエのようなものだとおもってください。お客さんはワインの専門家ではないので「どの産地がいいのか?」「どの年代がいいのか?」と聞かれても困ってしまいますよね。ここに選択肢を提示してくれるソムリエがいれば、料理とワインの両方を引き立てる最高のペアリングを楽しむことができます。
医療も同様で、本人も家族も専門家ではありませんから「胃ろうは入れますか?」「挿管はしますか?」「心臓マッサージはしますか?」と聞かれても判断のしようがありません。そんなとき、本人の価値観や望みにあわせた医療・ケアへ導く医療の専門家が、緩和ケアチームです。治療のこと、ケアのこと、薬のこと、お金のこと……さまざまなお悩みに対応するため、多職種で構成しています。