重要なお知らせ

副院長兼内視鏡センター長が就任いたします

「消化管は心の窓」

柏木秀幸

38年前、まだファイバースコープの時代でしたが、私に胃の内視鏡検査を教えた指導医が大切にしていたことは「苦しくない内視鏡検査」でした。現在はビデオエンドスコープの時代ですが、内視鏡検査により、非常に微細な変化や肉眼では見えにくいものも見ることができるようになりました。一般的に検査は患者さんにとっては怖いものです。ともすると痛く・苦しい検査は回避したいと思うのではないでしょうか。しかし、正しい診断、そして癌の早期発見のためには、消化管内視鏡検査は非常に有用な検査で、必要な検査です。そのため、苦しくない内視鏡検査が求められる時代でもあります。
ストレスや体調の変化がおなかの調子に表れることを経験したことがあるのではないでしょうか。消化管は、食道から、胃、十二指腸、小腸、大腸まで、実に9mに及ぶ長い管です。その入り口と出口は外界と繋がっていますので、身体の中心に外の世界があるのです。人体は、約60兆個の細胞で構成されていると言われていますが、ヒトの大腸内には、実に500種類以上、100兆個以上の細菌により腸内細菌叢が形成されています。通常はヒトに有利に働いていますが、腸内細菌叢と病気の関係も指摘されるようになりました。ところで、発生学的に脳と腸は同じで、両者は密接な関係にあります。双方向で影響を与えていますので、その関係は昔から「脳腸相関」と呼ばれています。消化管は「心の窓」ともなっていますが、身体の変調を知らせ、多彩な症状を示すことがあります。例えば、食道は狭心症に似た痛みを発生することがありますが、胃が痛くなった場合、どのような病気を連想するでしょうか。一般的には、胃癌や胃・十二指腸潰瘍を考えるのかもしれません。しかし、胆石症、膵臓や心臓の痛みを含め、色々な臓器の痛みを感じている可能性もあります。一方、胃の病気の場合、胃癌は進行するまで症状が出にくく、胃・十二指腸潰瘍は、潰瘍があっても、その半数が無症状です。そのため、出血・貧血で気づくこともありますし、急に穴(穿孔)が開くことで見つかることもあります。ところで、胃癌、胃・十二指腸潰瘍の原因としてはピロリ菌の存在が重要です。これまで多くの日本人の胃の中に生息していたピロリ菌ですが、今日では保菌している人も少なくなってきました。さらに、除菌治療も普及してきました。ところが、ピロリ菌もなく、潰瘍もないのに胃が痛くなることがあります。機能性ディスペプシアや胃食道逆流症といった現代的な病気も考えなければならなくなります。これまでのお話は、消化器症状に関する説明の一部に過ぎません。これから、「苦しくない内視鏡検査」とともに、「患者さん1人1人の症状」と向き合っていきたいと思います。